今すぐ買わない理由を提示されたときの対応

 営業の提案に対して、「今すぐ買わない理由」を懸念・反論・躊躇の形で示すお客様がいます。
こういったいわゆる「オブジェクション」について、下図に「拒絶の強さ」で分類し、その裏側にあるネックを書き出してみました。

 
 

 強行突破で無理に説得しようとしても前に進まない商談は、どう進めていくのがよいのでしょうか?
以下の「拒絶の強さ」の3段階に分けて解説します。

(1)一時の感情

(2)損得勘定

(3)価値観や信条

(1)一時の感情

 提案内容自体にネガティブなわけではなく、「今のまま流されて決めること」への抵抗があるお客様がいます。

  • 内容に対し賛成や反対が明確なわけではない

  • なんとなく、そのまま説得されたくない

  • 単に考える時間がほしい

 このような、もう少し考えたいというお客様に対して「そんなこと言わず、今すぐ決めてください」と迫ったり、「今ならキャンペーンで安くなりますよ」と即決を求めたりしても、お客様にとって良い買い物になりません。
相手の心の中にあることをすっきりと吐き出してもらい、それを一緒に整理しましょう。

(2)損得勘定

 メリット・デメリットを天秤にかけ、結果として現状維持を選ぶお客様も多くいます。

  • 不確実なことで損をするのは避けたい

  • 今の選択肢が気に入っているので手放したくない

  • 自分の居場所を脅かされたくない

 これらは、実際には「過去に前例がないので……」「今のやり方をもう少し続けたい」といった台詞で表れます。

 人の心理として「現状バイアス」は強く、損失の2.6倍の利得がないと人は動かないという調査もあるくらいです。
メリット・デメリットを洗い出し、メリットが大幅に上回ることを示す必要があります。
一方で、これを正面からやろうとすると「そんなに大きなメリットを示せない」ということもありますよね。

 そんなときは、お客様と営業の「関係」を見直すことをおすすめします。
お客様が「この営業は自分のことをわかってくれる」と感じているかどうかに注目しましょう。
このラインを越えた後は「感じるコストやリスク」がかなり低下するはずです。
「わかってくれる営業からの提案を採用する」ことは、お客様にとってもプラスになります。

(3)価値観や信条

 拒絶の度合いが最も強いのがこのパターンです。

  • 自分が大切にしている考え方に反したくない

  • 過去のトラウマ体験に照らして抵抗を感じる

  • 過去における自分の言動と矛盾したくない

 こういったお客様は、過去の出来事にまつわる負の感情があります。
出てきがちな台詞は「以前にも同じようなことを試してみたが、うまくいかなかった」といったものです。

 このケースで真っ先に把握すべきは「過去の出来事」に関する詳細情報です。
影響を与えた過去の出来事や言動を深く掘り下げ、そこに「思い込み」が発生していることに気づいていただき、今回の提案については、価値観や信条とは矛盾しないことを示しましょう。

 

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高橋浩一