商談におけるメモの活用

 「議事録」という言葉は、世の中のイメージで言うと、まだ仕事を覚える段階にいる若手の人が下積みのためにやるとか、単なる記録のためという印象がありますよね。
しかし、営業活動において「メモ」はとてもパワフルなものだと昔から感じています。

中間段階でメモを見せる

 まずは下図をご覧ください。
こちらは、コミュニケーションの双方向性を保ちつつ、つまり相手にもお話していただきながら、どうやって合意・結論にたどり着くかを解説した図です。

 
 

 商談の場を前半と後半に分けていて、前半は、相手のお客様の話を聞くことに集中する「傾聴モード」です。
そして一度中間段階で簡単にまとめるのですが、このときに、ラフでもいいのでメモを見せてしまうということをおすすめしています。

 特にオンラインだとものすごくやりやすくなります。
リアルのときは、私はホワイトボードを使ってよくまとめていたのですが、ホワイトボードを使う文化の中で育った人でないと、何か人前で書きながら進めるのって結構ハードルが高いですよね。

 しかしメモというのは場を動かす働きを持っていますので、ぜひ身につけてほしいやり方です。
オンライン商談では画面共有でテキストメモでまとめてもいいですし、パワーポイントの提案書を使ってディスカッションしながらそのまま編集するという形をとるのもおすすめです。

メモの位置づけは変化する

 続いてのスライドは、手元のメモの位置づけがどういうふうに変わっていくかという変化を書いたものです。

 
 

 「メモ0」というのは事前準備の段階で、お客様との商談や打ち合わせに向けてどういうふうに備えをしておくかというものです。

 そしてそれがディスカッションの真ん中あたりで「メモ1」(相手と一緒に「発見」をするためのもの)になります。
これは、一旦書いたメモを中間段階で見せることによって新たな発見に繋げるためのものです。

 見えないものが見えるようになると、気づきが促進されます。
だからこそ、きれいでなくてもいいから真ん中段階で一旦メモを共有することを強くおすすめしているのです。
ずっと共有したままでもいいので、とにかく最後ではなく途中で見せましょう。

 ディスカッション終盤で、今日の成果を確認するための「メモ1.5」、終わった後に送る議事録が「メモ2」といった感じですね。

メモで「わかってくれている感」が増す

 世の中でイメージされる「議事録」は上図の「メモ2」のことだと思うのですが、「メモ1~1.5」の存在によって、お客様との認識ズレを防ぐことができます。
これによって商談にどういうインパクトがあるか?というのが次のスライドです。

 
 

 「アクティブ・リスニングで丁寧に深掘り」というのは、さきほどの「W字型」で言うところの前半段階です。
そこで深く耳を傾けて聞くだけでも相手の感情はプラスになりますが、真ん中の段階でメモを提示することで「わかってくれている感」がぐっと増すのです。
相手の感情に働きかけることができ、さらに議論の解像度も上がります。

 その後に「追加情報で納得感の醸成」とありますが、これは、W字型ディスカッションの中では後半で「肝となる情報」を出すということです。

要件整理でメモを進化させる

 メモをもとにして、さらに要件整理の3つの質問(網羅感、具体化、優先順位)を聞いていくことによって議論が深まっていきます。
それはキークエスチョンによって、メモの内容が一段バージョンアップするということです。

 
 

 メモを見て認識のすり合わせができるだけでなく、営業が介在することによってディスカッションの質が上がり、成果物がより進化していくのです。
そういう意味で、メモというのはディスカッションを支える非常に強力な武器になるのではないかと思います。

 多くの会社では、議事録を単なる記録として扱うため「内容の正確さ」を重視します。
しかし私は、とにかくラフでもいいから途中段階でメモを共有して、どんどんツッコミあった方が議論が進化するのではないか、そのためにこそメモを使うべきだと思います。
メモをうまく利用して、商談の心強い武器にしていきましょう。

 

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高橋浩一