典型的な断り文句の壁をどう突破するか

 「以前、似たようなサービスを導入してうまくいかなかった」や「当社は特殊なので、そういうのはうまくいかないと思う」など、お客様の頑なな断り文句(オブジェクション)に直面したとき、営業が意地になって説得してもうまく進まないものです。

 そんなときに行うべきは、説得ではなく「過去の事実に対するヒアリング」です。

 お客様と営業の意見が異なっていることでお客様がモヤモヤしたら、その矛盾を解消するために、お客様としては「目の前の営業が言っていることが間違っているのだろう」という落としどころになります。
これが「認知的不協和理論」です。
「正面からの反論は効果が薄い」ということを押さえつつ、アプローチ方法を考えてみましょう。

 
 

過去の事実を深くヒアリングする

 例えば「以前、似たようなサービスを導入してうまくいかなかった」というお客様の断り文句がありますね。
これに対しては、「以前にどんなことが起こったのか」を、まず根掘り葉掘りヒアリングしましょう。
このヒアリングが浅い状態でカウンターとなるロジックをぶつけても、お客様の反応は薄いままに終わってしまいます。

 過去の事実をとことん聞くと、例えば

  • 過去に似たようなサービスを導入した

  • そのとき、目的がよくわからないままにプロジェクトを始めてしまった

  • 各所から反対意見が出た

  • 結果、ハレーションに耐えきれず自然消滅した

といったように、事実が明らかになってきます。
そこで次は何に注目すべきでしょうか?

思い込みを発見する

 断り文句(オブジェクション)の裏側にある過去の事実を掘り下げていくと、よくそこに「思い込み」が存在していることがあります。

 「目的がよくわからないままプロジェクトを始めてしまった」 ⇒「当社ではこういう新しい取り組みは社内では理解されない」という思い込み

のような構造です。
まずはこれを発見しましょう。

個人の心の声を引き出す

 思い込みの存在を突き止めたとしても、そこですぐ説得に移るのは早すぎます。
「当社ではこういう新しい取り組みは社内では理解されない」という思い込みに対しては、いきなり「そんなことはないですよ。こうすれば理解されます」と説得するよりも、「なぜ、理解されないと思うのですか?」と深掘りしていきます。

 思い込みの裏側には、個人の解釈や価値観が存在しているので、そこを丁寧に掘り下げて聞いていくのです。
すると、「本当は新しい取り組みを理解して欲しいのに、理解されず、残念だった」といった心の声が表に出てきます。
断り文句が頑なであるときは、逆に「実はやりたい」という心理があることが多いです。

「意外な事実」をぶつける

 断り文句の裏側にある「真逆の心の声」が出てきたら、さあ説得のチャンス!……と思っても、まだ早いのです。
次にぶつけるべきは「お客様がまだ知らない意外な事実」です。
「意外なことに実は……」という枕詞で、客観的な事例を提示します。
深層心理まで吐露したお客様は、「事実」をまっさらに受け止めてくれるでしょう。

 思い込みの存在が明らかになり、裏側の解釈や価値観が見えてきて、深層の心理を吐露したお客様は、認識の枠組みの外側にある事実(うまくいかないと思いこんでいたけれども、こうすればうまくいくという事例)に対して、前向きな好奇心で見てくれるはずです。
もしその情報がお客様に響いたら、次に質問が来ます。

前向きな質問がきたらチャンス

 「前向きな興味によって発せられた質問」がきたときこそ、チャンスです。
会話のキャッチボールを往復しながら、自社サービスの魅力や強みを自信もって訴求していきましょう。
お客様の熱量もだんだん上がってきます。
腹落ちした状態で、「今まではこういう理由でダメだったけど、今度は明らかに違うな」という目で見てくれるようになります。

 こういった提案活動におけるよくある壁については、営業マネジャーが「こうすれば突破できる」という道筋を示せると、メンバーも活動しやすいものです。
精神論や表面的なテクニックで終わらせず、「構造」を理解したアプローチが組織に浸透していくと、勝率がどんどん上がっていきます。

 
 
 

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高橋浩一